OtoyaLog

おとやさんが好きかって書くログ

中国語方言ポップス三者三様

ちょっと客家語を勉強することになりまして。私の中国語学習歴は、普通話はかなりしっかり、広東語も結構しっかり勉強した経験がありまして、台湾語(福建語)はちょっとかじりましたが全く話せません、という感じ。一応四言語目の中国語系の言語。

言語を勉強し始めるとそれぞれの言語で歌われているポップソングを探す趣味があるんですが、広東語と台湾語客家語三者三様だな、と思ったのでちょっとまとめてみます。


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まずこちら。私が世界一好きな張國榮の《春夏秋冬》。こちらは発音は広東語なのですが、歌詞の語彙や文法は文語ベースになっており、日常的に話される口語の広東語とはかなり異なります。彼の曲に限らず、香港の広東語ポップスはこういったスタイルがほとんど。

許冠傑みたいにかなり口語よりの歌詞を作る方もいるにはいるんですが、やはりかなり少数派という印象。この曲楽しくて好き。ちょっと歌詞の「1997~」のあたりが今聞くと何とも言えない気分になるんですが。


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一方の台湾語ポップス。あんまりサンプル数聞いてないので分かったようなことは言えないんですが、かなり口語よりの歌詞を書かれる方が多い印象があります。上の張國榮の曲については、例え広東語がまったく分からなくても歌詞を見れば内容はほぼ完全に分かるのですが、台湾語の曲は台湾語の語彙を知らないと漢字を見ても理解できない部分が多い印象。

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茄子蛋めちゃくちゃ好き。歌詞聞き取れないけど。

 

最後に客家語のポップス。客家語と台湾国語の両方で活動されている羅文裕のこの曲。


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歌詞を見ながら聞くと客家語を知らなくてもほぼ完全に理解できるんですが、これが罠。歌いだしの歌詞は以下のようになっています。

我聽說頭擺的時節 講客話會給同學捉

ただ、これをそのまま客家語の発音で読んでも彼が実際に歌っている歌にはなりません。上の歌詞を正確に客家語で書くと以下のようになります。

我聽說頭擺的時節 講客話會給同學捉

𠊎頭擺時節 講客話會同學

一文字目から「我」がどっか行きました。「我」を客家語の発音で読むとngoとなるのですが、曲を聞いて頂けると分かるように、彼はngaiと歌い出しています。ngaiは漢字で表わそうとすると「𠊎」になるんですが、この「𠊎」が口語の客家語では「我」(=私)を表わす語彙になるわけです。

この客家語の歌詞は私が聞き取って直したものなので間違いがあるかもしれませんが、たぶん大丈夫だと思う。

つまりこの歌は上の二つのパターンとも異なり、口語で歌って歌詞じゃなくて中国語の訳詩を載っけているというパターン。

 

最後に上海語のポップスも乗っけときますね。


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上海語なんもわからん。

『ペルシア語四週間』を四週間+三週間と二日でやってみた

Q. 大学書林の『ペルシア語四週間』って四週間で読み切れるの?

A. 無理です

以上。

 

閑話休題大学書林から出ている黒柳恒男著『ペルシア語四週間』という全602ページの分厚い学習書があります。今まで文法事項の参考書として手元に置いていたのですが、ちょっと気合いを入れて頭から勉強していくか、と思って勉強を始めたのが1月20日、そして今日ついに最後までやり切りました。

ちなみに私は初学者ではありません。白水社の『ニューエクスプレス ペルシア語』は4~5周くらいしており、吉枝聡子著『ペルシア語文法ハンドブック』についても一通り上げています。基本的には独学ですが、某大学のペルシア語の授業に一瞬だけ潜らせていただいたことがあったり、最近はイラン大使館関係団体が主催の口語中心の講座をオンライン受講したりしています。その程度のペルシア語力の持ち主です。

勉強の方法ですが、全ての例文について、単語の意味が明確でないものは辞書を引き、1~3回程度ノートに書きつける。それぞれの章末にある訳読と復習問題は自力で解き、回答を確認して手直しをする。最後の二日部分の現代文、古典文それぞれの長文についても、自力で日本語訳を作り、掲載されている日本語訳と照らし合わせて確認する、という形でやりました。

総学習時間は81時間49分。本書の頭から読み始めたのが1月20日で、読み終わったのが3月11日。つまり51日間、7週間と2日かかった計算になります。1日あたりの学習時間は1時間36分。単純計算すると、現在の私のペルシア語力で、本書を4週間で終えるためには1日あたり2時間55分の勉強が必要だった、ということになります。となるとまあ、「無理」というのは言い過ぎで、学習環境によっては達成可能な目標であるような気はします。とはいえ、やはり初学者には無理なのでは……

 

ちなみに本書、ペルシア語の文法項目らしい文法項目の解説は第4週第3日で終わり、4日と5日はペルシア語の理解に役立つアラビア語の文法事項の説明、6日と7日はひたすら長文読解の練習(6日が現代文、7日は古典(古典とはいってもハーフェズやフェルドウシーといった現代のペルシア語の範疇))という構成になっています。

私のケースでは、この最後の2日間の読解を終わらせるのに11日間、18時間かかりました。最後の2日分を終わらせるのに、学習時間の4分の1弱がかかっている計算になります。

 

完走した感想としては、中級レベルくらいまでに必要な知識は一通り紹介されているので、やはり通してやると確実に力はつく、という実感を持ちました。ただ、イスラム歴の月名など、リストで紹介されてその後ほとんど登場しない知識などもあり、これらについてはまだしっかり覚えられている気がしません。まあ、このあたりのことは本書に限った話ではないので、自分で繰り返して覚えるしかありませんが。

また、第4週4、5日のアラビア語の文法説明は簡素にすぎるので、アラビア語の文法知識がないと正直よく分からないと思います。私はアラビア語の知識がほとんどないので、やはりしっかり分かってはいません。

最終日の訳読に関しては、ガッザーリーとフェルドウシーを読まされるのですが、特にフェルドウシーはさすがにこの段階で読むのは厳しい気がします。演習で読むハイヤートとハーフェズもそこそこ難易度は高いものの、これらについてはグロッサリーが付いているのでだいぶ読みやすくなっているのですが、訳読にはグロッサリーが付いていないのでかなり難度が高いです。

ソウルに行った話 1 お金の事

先日2泊3日で韓国のソウルに行ってきました。前回の渡韓が2013年だったので丸々10年ぶり。前回は朝鮮語チョットワカルな知人に連れて行ってもらったので、観光から食事から阿保みたいにぼーっとしていても何の問題もありませんでした。今回は一人旅ということで多少は朝鮮語を勉強して行ったのですが、だいぶ役に立ちました。看板やメニューのハングルがスムーズに読めるだけでもだいぶ違います。

時系列でだらだら旅行記を書こうかとも思ったんですが、今回はテーマ別に書いてみます。今回はお金のこと。

クレジットカードのこと

ことソウルに限って言えば、クレジットカードがほとんどあらゆる場所で通用します。私はマスターカードを中心に使っていたんですが、ビザ、マスターどちらもほとんどの飲食店、コンビニなどでは使えるようです。JCBはよく分かりません。

クレジットカードが使えない筆頭が公共交通機関。今回の旅行では地下鉄を使わずにバス縛りで移動していたのですが、T-Moneyカードという、Suica的な公共交通カードが便利です。便利なのですが、このT-Moneyカードへのチャージ方法が現状では現金のみ。そのため韓国ウォンへの両替はほぼ必須です。

両替レートとかキャッシングのこと

結論から言うと、明洞あたりのレートの良い両替屋に日本円の現金を持ち込んで両替するのが一番割が良いです。多分クレジットカードのキャッシングより良い。仁川国際空港から明洞あたりまで行くバスのチケットはクレジットカードで買えるので、明洞直行してそこではじめて両替するので良いと思います。ただ、両替屋の営業時間は知らない。深夜着とかでもいけるんだろか。

今回空港のATMでキャッシングも試したのですが、レートは空港で現金を両替するよりはマシ、程度でした。また、ATMによってはカードが弾かれたり、結局最後まで通らなかったカード(楽天銀行デビットカードとか)があったりと、ちょっと面倒くさいです。楽天カードのキャッシングは通ったんですが、楽天銀行デビットカードの引き出しが通らなかった理由は現在でも謎。

マカロニウエスタンにタンブルウィードは出てこないという誤報

以前下記のエントリーで「マカロニウエスタンにタンブルウィードは出てこない」という主張をしていたのですが、その後、タンブルウィード(らしきもの)が登場するマカロニウエスタンが発見されたため、そのご紹介と主張の訂正をいたします。

 

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先日(といっても、実はもう数年前なのですが)、知人の某マカロニ研究家の方からTwitter(現X)で連絡を頂きまして、アンソニー・ステファン主演の『地獄から来たプロガンマン』のクライマックスにタンブルウィードが登場しているとのこと。

同作は私も視聴済だったのですが、タンブルウィードが出てきた記憶はなく、「そんなのあったかなあ」と思いながら再視聴したところ、めっちゃ登場していました。

タンブルウィード

タンブルウィード!

タンブルウィードッ!!

以前の記事に記載した多くのマカロニウエスタンのロケ地となったスペイン南東部のタベルナス砂漠や、イタリア中部にはこのタンブルウィードが生えていないというのは事実ではあるので、この物体が本当にタンブルウィードであるのかには疑問はあるものの、映画内でタンブルウィードとして扱われていればそれはタンブルウィードなのであり、本作でのこの物体の扱いはまさしくタンブルウィードであると言わざるを得ないものでした。

よって、ここに以前の「マカロニウエスタンにタンブルウィードは出てこない」という主張を撤回し、今後は「マカロニウエスタンには滅多にタンブルウィードは登場しない、数少ない例外としては『地獄から来たプロガンマン』がある」と主張することに致します。

まあ、それはそれとしてタンブルウィードについて「マカロニウエスタンでよく見るやつ」って誤認している人が『地獄から来たプロガンマン』を見たことがある可能性ってかなり低いとは思うんですが(負け惜しみ)。

日本語ウェブ環境におけるrubyタグの問題点

一般社団法人 ルビ財団の考え方に共感したので、ブログ記事のうちのいくつかにルビを振ってみたのだが、htmlにおけるrubyタグの問題点に気づいたので書いておく。ルビ財団のウェブサイトは以下。

rubizaidan.jp

大きな問題点は検索性の低下だ。例えば「気が付く」という句がある場合、ルビを振ると「()()く」となる。これはhtmlでは<ruby>気<rp>(</rp><rt>き</rt><rp>)</rp></ruby>が<ruby>付<rp>(</rp><rt>つ</rt><rp>)</rp></ruby>くとなるのだが、このようにソース上で「気が付く」という文字列が分断されてしまっているため、ページ内検索で「気が付く」と検索しても引っかからなくなってしまう。これは長い文章などが表示されている時に非常に不便だ。

もうひとつの問題はソースの可読性の大幅な低下と、それに伴うメンテナンス性の大幅な低下だ。上の例を見ても分かるように、タグが入れ子になっていて非常に構造がつかみにくく、正直文章を書きなおそう、という気は起きない。

以上の二点からして、現状HTML環境でユニバーサルルビを導入するのはかなり難度が高いと感じる。

邦訳版「涼山彝語会話六百句」の誤植(更新中)

前置き

涼山彝語学習の古典的名著として、李民、马明著の三部作《凉山彝语语法》、《凉山彝语语音概论》《凉山彝语会话六百句》(いずれも四川民族出版社刊)があります。それぞれ文法説明、音韻的な説明、会話文から実際の使い方を学ぶ、という、3冊仕上げれば初級は卒業という感じの語学書です。

2000年代以降涼山彝語の新しい学習書も出てはいるのですが、1980年代出版の本書は何というか、古典的名著的な位置づけの語学書だと思います。彝語やってる人はとりあえず上げてる。

この三部のうち、《凉山彝语会话六百句》には奇跡的に邦訳が存在します。それが三重大学(出版当時)の福田和展先生が出された『涼山彝族の言語と文字』(三重大学出版会)に巻末付録として収録された「涼山彝語会話六百句」です。本書を購入した人の八割は付録目当だと思う(私見)。

この《凉山彝语会话六百句》、元々誤植が比較的多い本でもあり、「涼山彝語会話六百句」でも誤植を修正して訳出した旨の記載があるのですが、それでも屡々誤植が見られます。というか、《凉山彝语会话六百句》では正しい部分が「涼山彝語会話六百句」では誤植になっている例も多いです。

本稿では学習者の便に供するため、誤植だと思われる部分を指摘していきます。あくまで学習の便に供するのが目的であり、翻訳を論う目的ではありません。また、私も単なる一彝語学習者であり、勘違いがあるかと思います。諸賢の御叱正を頂ければ幸いです。(本稿の隠れた一番の目的は私の勘違いを指摘して頂くことでもあります。)

なお、《凉山彝语会话六百句》の会話本文は彝文字のみの記載ですが、邦訳版「涼山彝語会話六百句」には会話本文にも拼音が記載されています。この拼音にもしばしば誤植が見られるのですが、この部分は掲載していません。彝文字表記を正と見做しています。

本文

規範彝文音節表

これは「涼山彝語会話六百句」部分ではないのですが、音節表の中に間違いが四つあります。

一つ目はzhapの文字。ꊗと記載されていますが、これはzapの文字で正しくは「ꍉ」。

二つ目はchopの文字。ꍨと記載されていますが、これはchuopの文字で正しくは「ꍬ」です。

三つ目はshapの文字。ꌓと記載されていますが、これはsapの文字で正しくは「ꎮ」。

四つ目はjitの文字。ꉮと記載されていますが、これはhitを表わす文字で正しくは「ꏠ」です。

第3課

1. 会話中の「あなたの父母はお幾つですか?」という文が「ꅽꀉꄉ、ꀉꂿꈍꑍꉬꀐ?」となっています。ꉬでは意味が通らないため、ꈓの誤植です。「ꅽꀉꄉ、ꀉꂿꈍꑍꈓꀐ?」となります。

なお、この文の拼音は「nit axda axmo kepnyip kut ox」となっており、「歳、年」を意味する量詞がkut(ꈎ)になっています。ꈎ/ꈓともに同じ意味の量詞なのですが、ꈎは直前の数詞が中平調の時に使われ、それ以外の場合にꈓが使われます。この文の場合、「幾つ」を意味するꈍꑍが低降調なので量詞はꈓが使われるため、拼音にも誤植があります。

2. 「私の父は50歳になり、」という句が「ꉠꀉꄉꆹꉬꊯꈎꀐ,」となっています。「十」を表わすꊰが中平調から次高調に変調し、ꊯとなっています。ꊰは中平調の数詞などに前置したときに変調する(直後の「45歳」が「ꉬꊯꇖ」となっていることに注目)のですが、ここでは変調する理由が不明です。そのため、50はꉬꊰで良いと思います。「ꉠꀉꄉꆹꉬꊰꈎꀐ,」が正だと思います。

ちなみに、ꉬꊯと変調するのであれば、直前の数詞が中平調以外であるため、量詞はꉬとするべきでしょう。実際にはꊰは変調しないのでならないですが。

第4課

会話中の「あなたの妹は何をしていますか?」という文が「ꅽꃺꃀꑞꃅ?」となっています。「ꃺꃀ」ではなく「ꅫꃀ」が正しいです。おそらく字体が似ているための誤植です。「ꀃꅫꃀꑞꃅ?」となります。ちなみにややこしいことに「ꃺꃀ」は女性が「姉」を呼ぶ際に使う語です。

第6課

1. 「洗面器」という語が単語欄では「ꑊꋌꀃ」、本文では「ꑊꋍꀻ」となっていますが、「ꑊꋌꀻ」が正しいです。中文版ではどちらも「ꑊꋌꀻ」と正しく記載されており、謎の誤植です。

2. 会話中の「あなたはよく眠れましたか?」という文が「ꆏꀀꌐꀕ?」となっています。これは「ꆏꀀꌒꀕ?」の誤植でしょう。「ꆏꀀꌐꀕ?」では「あなたは眠り終わりましたか?」の意味になってしまいます。

第7課

1. 単語欄では「薄い」という語が「ꀀꁧ」となっていますが、これは「ꀁꁧ」の誤植です。拼音表記は正しいです。

2. 会話中の「あなたの掛布団は薄すぎます。」という文が「ꅽꀀꀨꇨꀞ!」となっていますが、これでは「薄い」という語が抜けています。「ꅽꀀꀨꀁꁧꇨꀞ!」が正しいでしょう。

以降、追記します。