おとやろぐ

イタリア製・ソ連製西部劇研究家見習い

福建客家土楼を見に行ってきた

3月の中旬、中国福建省の永定県に漢族の客家の人々が作った土楼住宅を見に行ってきました。以下はその簡単な旅行記。

0. 旅行準備
旅行準備といっても、中国はもう何度か訪れているのでやらなきゃいけないのはホテルと航空券の手配くらい。今回は5日間と日程がわりとタイトだったため、土楼に泊まろうと計画を立てていた2日目以外は日本でホテルを予約していきました。

航空券の予約はH.I.S.のウェブサイトを利用。ネットで航空券を予約する場合、大抵H.I.S.etourを利用しますが、中国方面はH.I.S.のほうが強い印象があります。土楼自体は福建省から広東省にかけて広く分布しており、今回の目的地である福建省永定県の最寄りの空港は廈門にあります。東京から廈門には直行便も出ているのですが、今回は日程と料金の兼ね合いで、上海で乗り継ぎを行う羽田→上海→廈門というルートの中国東方航空を利用することにしました。

ホテルの予約には以前銀川を訪れた際にも利用したチャイナクラブを利用。土楼の1泊を除く3日分を予約しておきました。

1. 日本→上海→廈門
羽田空港から午後1時半に出る便に乗るため、自宅のある山梨から高速バスで向かいます。途中、事故渋滞に巻き込まれつつも、バスは定刻どおり羽田着。行きの便は中国東方航空の子会社である上海航空の運行だったので、そこのチェックインカウンターへ。ここで上海・廈門間のチェックインも出来ると思っていたのですが、到着するのは上海虹橋空港、出発は上海浦東空港と空港が違うせいか、チェックインできたのは羽田・上海間のみでした。

フライトはほぼ定刻通り。現地時間午後4時過ぎには上海虹橋空港に到着。廈門行きの便は6時間後の出発だったので、空港間を移動がてら地下鉄の南京東路駅で途中下車、南京路の歩行者天国と外灘をぶらぶらすることにしました。2012年の4月に銀川を訪れた際にも乗り換えで上海浦東空港には立ち寄ったものの、街をぶらつくのは2010年の5月のGW以来なので、およそ4年ぶり。とりあえず、4年ぶりの上海は空気がものすごく汚くなっていました。外灘から眺める対岸の東方明珠電視塔も少々くすんで見えるほどに空気は汚れていました。

南京路歩行者天国
南京路。この辺りは4年前とあまり変わっていませんでした。

外灘から眺める東方明珠電視塔
見ての通りすごい空気。

南京東路駅から龍陽路駅までは再び地下鉄に乗り、そこから上海トランスラピット(いわゆる上海リニア)に乗り換え。地下鉄が8元なのに比べ、上海トランスラピットは50元と、比べ物にならないくらい高いのですが、同行した妻が乗ってみたいとのことで観光も兼ねて乗車しました。さすがに椅子から何から地下鉄よりもかなり快適でした。

浦東空港は、それこそ羽田空港よりもよく来ているので、何の問題もなくチェックイン完了。午後9時55分発の上海航空便に乗り、廈門高崎空港には定刻どおり午後11時35分着。既に路線バスも終わってしまっているため、空港前のタクシー乗り場は長蛇の列になっていました。ぼくたちも列に並び、廈門陽光青年酒店 故宮東路店へ。ツインで1泊198元と、そこそこの値段であり、何よりバスターミナルに近いのが気に入ったので、日本で予約しておきました。部屋は割と奇麗でシャワーも付いており、何より受付ロビーの珈琲メーカーで無料で珈琲が飲めるのが嬉しい。砂糖入りの甘いものだけでしたが。

2. 土楼巡り
翌日、6時ごろホテルをチェックアウトし、歩いて10分ほどのところにある湖濱南長途汽車駅(バスターミナル)で6時50分発の永定下洋(永定県下洋鎮)行きのバスのチケットを購入。1人70元。目的地の洪坑村は路線上にあるので、運転手さんに洪坑村で降りるから、と予め伝えておきます。揺られること2時間ほどでバスは山間部に入ってゆきます。更に1時間ほど乗っていると、高頭郷という集落に差し掛かりました。もともと、洪坑村にある土楼を見たあと、高頭郷にも回ろうと思っていたため、運転手さんに頼んで高頭郷で下ろしてもらいました。

この高頭郷には「土楼の王」という異名を持つ代表的な円楼建築である承啓楼をはじめとする幾つかの円楼、角楼があります。持参したガイドブック『旅行人ウルトラガイド 客家円楼』の書きぶりから、承啓楼の入口で入場料を徴収しているのかと思っていましたが、しっかりとしたチケット売り場の建物があり、高北土楼景区入場券というものを買わされました。1人50元。おそらくガイドブックが書かれたあと(初版2000年)にだいぶ観光地化が進んだものと思われます。

この日は生憎の雨だったのですが、チケット売り場の横の売店でビニル製の靴防水カバーが10元で売っており、これのおかげで靴に水が染みることなく、割と快適にうろつくことができました。

観光客は中国人の団体客が中心で、個人旅行者はまばら。ちょうどぼくたちが入場したタイミングで団体旅行客がガヤガヤと入ってきたため、土楼に行くのは後回しにして、土楼群が上から眺められる展望台に上がってみました。上から眺めると土楼の形や大きさがよくわかり、なかなか迫力があります。展望台への階段は雨が降るとかなり滑りやすいので気をつけて。

高北土楼群景区
高北土楼群景区。大きな円楼が承啓楼。手前の円楼は僑福楼。

チケット売り場の前まで取って返し、そこから右側に歩いて行くと、何軒かの土産物屋の先に土楼が見えてきます。小さめの僑福楼を覗いたあと、ここのメインである承啓楼に入ります。中に入ってみると、円状の建物が三重に建てられ、真ん中に祖堂があるというかなり大きな形式。ガイドブックなどには2階以上に上がれるように書いてあるものもありますが、観光用に整備されている土楼についてはどこも2階への階段には柵が設けられ、観光客は上がれないようになっていました(ただし抜け道あり、後述)。

僑福楼
僑福楼は一重(重とは言わないかな)のシンプルな作り。

承啓楼
承啓楼。右側が最も外側の建物。

承啓楼
承啓楼。

承啓楼を一通り見終わり、次の土楼に移ろうとしていると、おばちゃんが話しかけてきました。聞いてみると、本来観光客は上には登れないのだけれど、自分は上の階に住んでいるから一緒について来れば登らせてあげる、とのこと。値段を聞いてみると1人10元。登ってみたかったのは確かなので承諾すると、私についてきなさい、とスタスタと歩いて行きます。あれ? と思っているとおばちゃんは承啓楼から出ていき、隣の世沢楼に入っていきます。どうやらおばちゃんが住んでいるのは承啓楼ではなく世沢楼で、登らせてくれるのは世沢楼のようでした。ちょっと残念ではありましたが、まぁ、いいか。

おばさん、割と気さくな方のようで、ここは土にヒビが入っちゃってるから危なくて使えないのよー、とか、色々話してくださいます。最上階をぐるっと一周し、写真も撮って再び1階へ。どうやらおばちゃんの息子さんが茶葉屋さんをやっているらしく、寄っていくよう勧められます。これが目的かぁ、と思いつつも色々お茶を入れていただき、雑談をしながら美味しくいただきました。そういえば福建省鉄観音の産地ですものね。結局茶葉1斤を60元で購入、ガイド料と合わせて80元。茶葉の値段も廈門に比べると確かに安い。

世沢楼
世沢楼は4階建ての角楼。

その後、承啓楼の上から写真を撮ってあげようか、と言われたものの、どうやらこちらは自分が登れるわけではないようなので丁重にお断りしました。

その後、唯一の五角楼と言われる順源楼を目指して高頭郷の一本道を東に歩いていったのですが、だいぶ歩いてもまだ3分の1くらいのところにいたので、諦めて戻りました。村はずれのあまり観光化されていない土楼の中には内部が少々荒れているところも見受けられました。

高頭郷の円楼
一応まだ人は住んでいるみたい。

次の目的地は高頭郷から歩くと1時間ほどかかる洪坑村。チケット売り場でバスの時刻を聞いて道で待っていたのですがなかなか来ない。ちょうどタクシーが通りかかったので値段交渉して乗せて貰いました。洪坑村にある客家土楼民俗村入口まで30元。安くもないけれど、別に高くもない、というお値段。

客家土楼民俗村の入場券は1枚90元。高北土楼群景区と比べて40元もお高いですが、敷地も広く、見どころも多いのでまぁ、こんなもんかな、という感じ。厦門からの日帰りツアーだと、たいていここを見て帰ることになります。

ガイドブックによると、ここでは振成楼という円楼に泊まることもできるらしい。チケット売り場の女の子に「ここって宿泊もできるって聞いたのだけれど……」と聞くと、「泊まれますよ。私の兄が振成楼に住んでいるので連絡してあげます」と言って早速電話をかけてくれました。どうやら受付で働いているのは景区内の土楼に住んでいる客家の女の子が中心のようです。

チケット売り場から多くの土楼が建ち並んでいる区域までは、しばらく川沿いの長閑な道を歩いて行くことになります。一応観光客向けの電動カーも走ってはいますが、景色もよいので天気が良ければぶらぶらと歩いて行くことをお勧めします。

いくつかの土楼を横目に歩いて行くと、目指す振成楼に到着。チケット売り場で貰った名刺を見せてお兄さんとやらを探すと……割とすぐ見つかりました。30代前半くらいの洗練された雰囲気の方で、どうやら当主の一人として実務面を仕切っているらしい。3階の部屋に案内してくれ、既に午後2時頃だったのですが、まだ昼食をとっていないというと、簡単な麺を出してくれました。

振成楼
振成楼。生憎の悪天候であまりいい写真がない。

振成楼
当主の林さんが普段住んでいらっしゃる一角。

振成楼
泊まった客室。清潔で必要十分に快適。ただしトイレとシャワーは別室。別室でもあるだけ良い。

昼食の麺
お昼ご飯。さっぱりした味付けで美味しい。

寝床を確保したあとは、暗くなるまで景区内を散策。最小の円楼として有名は如昇楼や、土楼の前身となる形態である五鳳楼形式の福裕楼など、見どころはたくさんありますが、よほどの土楼愛好家でない限り、半日もあれば一通り回れるでしょう。如昇楼や福裕楼でも宿泊は可能のようです。宿泊方法としては、住んでいる方との直接交渉し、客用の部屋を使わせてもらうという形になります。

如昇楼
如昇楼。

福裕楼
福裕楼。後ろに行くに従って建物が高くなるのが五鳳楼の特徴。

福裕楼内部
福裕楼の内部。装飾が奇麗。

夕飯は景区内にある酒井匯という料理屋でとりました。というより、景区を出てバス乗り場の辺りまで行けば食堂は何軒かあるのですが、景区内にちゃんとした食堂はここと、あと1軒くらいしかありません。梅菜扣肉が38元、客家豆腐が22元と、お値段はちょっと高めでしたが、味と量はさすがの中国大陸クオリティで折り紙付きでした。このうち梅菜扣肉は梅干菜とも言って、永定県の名物料理。この辺りの名産という米酒も頂きましたが、インドネシアのブルムワインのような、韓国の冬冬酒のような、まぁ、とにかく甘いお酒でした。

梅菜扣肉
梅菜扣肉。大量高菜と共に豚肉が蒸し焼きにされています。

客家豆腐
客家豆腐。

米酒
米酒。味はおいしいのですが、甘いので、正直食事中に飲むものではないです。

そういえば、外国人が土楼に泊まるのは割と珍しいようで、振成楼に宿泊を決めるとすぐ、楼内に暮らしている方にその情報が行き渡り、「どうやら日本人が泊まるらしいよ」「へぇ、珍しいねぇ」とか、「あれが今日泊まる日本人です」と他の観光客に紹介していたり、あげくの果てには学校帰りの小学生に「ウェルカム!」とか声掛けられたり、ちょっとした土楼内の有名人状態に…… 別に悪意は感じられないので悪い気はしませんが。というより、最近は中国の田舎の小学生でも「ウェルカム」なんて英語知ってるのか……とそっちのほうが驚きでした。

翌日、早朝に振成楼内をふらふらしていると、当主のおじさん(昨日の人とは別の方)と遭遇。挨拶をしたところ、最上階に連れて行ってくださり、写真を撮ってくれたり、色々説明をしてくれたりと親切にして下さいました。客家人は商人が多いと言いますが、皆さん人当たりがよく、(機会を見つければすぐ商売にしようとしますが、騙したり、嘘をついたりはしないという意味で)割と親切な方が多いという印象を受けます。

振成楼
振成楼の最上階から。真ん中に見えるのが祖堂。

バスターミナル(土楼汽車站)近くの食堂で昼食をとっていると、隣のテーブルに座っていた一人旅の初老のおじさんに話しかけられました。ぼくたちが日本人だと知ると、かなり流暢な日本語を使いはじめるおじさん。インドネシア華僑の生まれの方で、台湾の大学を卒業し、70年代に日本で何年も働いていたとのこと。今は広東省中山に住んで、悠々自適の生活を送っているそう。彼も廈門に戻るところらしく、12時過ぎに出たバスの中でも一緒でした。

3. コロンス島

午後5時過ぎに廈門のバスターミナルに到着。1泊目と同じ廈門陽光青年酒店 故宮東路店にチェックイン。前回の部屋とは違い、トレイとシャワーが別室になっていたり、窓からの眺めが少し良くなっていたりと値段は同じながら微妙にグレードアップ。

夕食はホテルの近くにある阿瓦山寨というチェーン店へ。名前からすると雲南の佤族料理のお店っぽいけどどうなんですかね。お店の内装も雲南少数民族っぽい感じでしたが。

ジャガイモの炒め物
ジャガイモの炒め物。

鶏の揚げ物
鶏の揚げ物。

翌日はコロンス島へ。ホテル近くのバス停から路線バスに乗ってフェリーターミナルへ向かいます。路線バスの運賃は1元。この辺の地元に密着したものの物価はそんなに上がっていないようです。バスに乗って10分ほどでフェリーターミナルに付きましたが、チケット売り場から何からものすごい人だかり。皆そんなにコロンス島に行きたいか。

チケット売り場の人だかり
フェリーのチケット売り場。

ターミナル入口の人だかり
ターミナル入口。一見ちゃんと列になっていますが、ゲートが開くとぐちゃぐちゃになります。

往復のフェリーと島内5ヶ所の入場券の付いた108元のセット券を買い、人混みに揉まれながら何とかフェリーに乗り込み、コロンス島へ。こんだけ人が多かったら島内も人だらけなんじゃないかと思いましたが、島は思ったよりは広く、そんなに酷い状態にはなってませんでした。それでも休日の江ノ島ぐらいは人がいました。

コロンス島の見どころは主に20世紀初頭に建てられた中洋折衷の建築物。小さな島の中にかなりの数の洋館が建てられており、うろうろしているだけでも面白いです。ほとんどの建物は現在も人が住んでおり、観光客に公開されている洋館は割と少なめです。

八卦楼
八卦楼。今はオルガン博物館として使用されています。

海天堂構
海天堂構。フィリピンに住んでいた華僑が建てた中国風洋館。

黄栄遠堂
黄栄遠堂。海天堂構のお向かいさん。この建物には、トランプの掛けの景品にされたという訳わからん逸話があります。

コロンス島には日光岩という名所があります。ここが島内で最も標高が高く、「日光岩に登らなければ、廈門に行ったとは言えない」というような言葉もあるようなところだそうです。確かに岩の上からの眺めは抜群なのですが、さすがに有名どころだけあってすごい人混みでした。

日光岩
日光岩。人だらけ。

日光岩からの眺望
こんな感じで、確かに景色はすごく良いです。

お昼ちょっと前に上陸して、洋館を何軒か眺めたり、日光岩を登ったりしてから昼食を取ったのですが、日光岩付近には割とお値段高めのお洒落カフェみたいなお店しかありません。てっきりコロンス島は全体的にそういう観光地なのかと思い、その中の1軒でちょっと高めのお昼を食べたのですが、島の南東のほうには割と大衆向けの食堂もありました。やられました。

日が暮れる前にフェリーで廈門島に戻り(あんまり知られてない、というか単にぼくが今回行くまで知らなかっただけなんですが、廈門の中心部って廈門島っていう島なんですね)、歩行者天国にもなっている市内一番の繁華街、中山路をうろうろ。路地裏には食堂もありますが、屋台もいろいろ出ており、食べ歩きが楽しめます。

屋台のラインアップもなかなか多種多様で、台湾の夜市でもよく見かけるジャガイモをくるくると切って揚げたものなんかもあります。廈門ならではのものと言うと、牡蠣煎とか魚丸なんかもありますが、一番インパクトがあるのが土笋凍(tusundong)と呼ばれている、トビゲラの幼虫を寒天で固めた煮凝り。醤油ベースのタレをかけて、割と皆さんスナック感覚で食しておられます。せっかくなので食べてみたのですが、寒天部分はタレと香菜の影響でスパイシーな心太(ところてん)っぽい。肝心の土笋は、何て言うんですかね、味はほとんどなくて(というか、たれでよく分からない)食感は筋っぽい野菜、固めの蕗を茹でたような感じと言いましょうか。まぁ、不味くはないです。ホテルに戻ってiPhoneで「トビゲラ」を画像検索してみて変な声が出たのはまた別の話です。虫、苦手。

土笋凍
うわさの土笋凍。ちょっとピンボケてますが、一番手前の寒天にくっ付いてる白っぽいのとかが幼虫。

ジャガイモ揚げ
ジャガ揚げ。台湾で食べたのより肉厚でした。

牡蠣煎
牡蠣煎。小さな牡蠣を卵と一緒にたっぷりの油で炒めたもの。

魚丸
魚丸。いわゆるツミレなのですが、中に餃子の餡みたいな豚肉が入っています。

交通費(長) 交通費(短) 宿泊 飲食 合計 /day
54,910 1,782 6,426 5,777 7,488 76,383 15,277

1人分の費用。1元=18円で計算しています。交通費(長)には東京、廈門間の航空券代を含んでいます。今回は行き帰りが日本の祝、休日と重ならない日程だったのもあり、航空券が割と安く取れたので助かりました。