おとやろぐ

イタリア製・ソ連製西部劇研究家見習い

ペルシア語の口語と文語

追記あり(2015/05/18)

これから書くことは、大学でペルシア語を専攻していたり、語学学校なんかで誰かからペルシア語を教わっている人にはとっくに自明のことだと思うので読み飛ばしてください。これからの文章はそういった施設に通わずに(あるいは通えずに)独習でペルシア語を学習している、という非常にニッチな層に向けたものになっています。

まず、大前提としてペルシア語を通時的にみてみると、大きく古代ペルシア語、中世ペルシア語、近世ペルシア語に分けることができます。現在のイランで広く通用しているものは、近世ペルシア語のうちで俗に現代ペルシア語と呼ばれるものになります。これから書く口語とか文語というのは、すべてこの現代ペルシア語を対象とした話です。

この辺はご存じの方も多いと思うのですが、ペルシア語は口語と文語の乖離が比較的大きいタイプの言語です。日本語や英語なんかを例にとってみると、基本的には書いたものをそのまま口に出せば不自然ではありません。もちろん、「こんにちは」と言うか、「こんちゃー」と言うか、「ちゃーす」と言うか、という変種は日本語にも(そして英語にも)当然ありますが、概ね文章語として書かれる「こんにちは。今日はいい天気ですね」といったものをそのまま音にしても不自然ではありません。

ひるがえってペルシア語では、多分、文語をそのまま音声にして日常会話をしようとすると、なかなか不自然になる(んじゃないかなぁ、と感じています。だって、ぼくもまだイランに行ったことないし、正確なことはわかりません)と思われます。文語を話しても、通じるとは思いますが、日本語で言うなら、「私は◯◯でござる」みたいな感じ(になるのかなぁ)。

そこで、ペルシア語を勉強するときに、自分が勉強しようとしているのが口語なのか、文語なのかを認識しておくことが必要になります。ぼくはペルシア語の勉強を下の本(ニューエクスプレス ペルシア語)を使って始めたのですが、始めた時点で、自分が勉強しているのが口語なのか、はたまた文語なのかよく分かっていませんでした。

ニューエクスプレス ペルシア語《CD付》

ニューエクスプレス ペルシア語《CD付》

結論から言うと、ニューエクで勉強できるペルシア語は、多少口語的な用法も紹介されているものの(たとえば、「何」を表す「چه」ですが、これは口語では「چی」になるのですが、これについては説明があります)、基本的には文語です。また、ぼくが調べたかぎりでは、日本で出版されているペルシア語の教材はだいたい文語を中心とした学習内容になっているようです。少なくとも、下に紹介している4冊はすべて文語です。

ペルシア語文法ハンドブック

ペルシア語文法ハンドブック

基礎ペルシア語

基礎ペルシア語

やさしいペルシア語読本―イランの歴史

やさしいペルシア語読本―イランの歴史

ペルシア語四週間

ペルシア語四週間

ぼくがこれらの本が文語だと気づいたのは、以前のエントリーで上げたペルシア語ポップスの翻訳がきっかけでした。指示代名詞や、所有を表す接尾辞とか、コピュラの活用など、細かなところがいろいろ自分が勉強したペルシア語とは異なっていたのです。普通に考えてポピュラー・ソングは文語ではなく口語で歌われるものですから、あぁ、そういうことか、という感じでした。

で、おそらくなんですが、日本で出版されている語学書で、ペルシア語口語を学習できる本はありません(あったら教えてください。買います)。文字資料としては、地球の歩き方のイラン編の巻末に記載されているペルシア語会話帳は一応カタカナ表記部分は口語でした。ペルシア文字表記部分はたしか文語だったと思います(イランでも、書くのは文語同様に書いて、読むときに口語的に読むということはあるみたい)。

E06 地球の歩き方 イラン 2014~2015 (ガイドブック)

E06 地球の歩き方 イラン 2014~2015 (ガイドブック)

旅の指さし会話帳は近所の本屋に売っていなかったので確認できていないのですが、どうなんですかね。用法から考えると、口語表現が載っていそうな予感はしますが。

旅の指さし会話帳72イラン (旅の指さし会話帳シリーズ―ここ以外のどこかへ!)

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  • 作者: ト゛ラシ゛ェ・エスファンテ゛ィヤール&五十嵐 D.ひとみ
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英語で書かれた教材には口語が学べるものがあるようなのです。だが英語。英語なー、面倒だなー、などとうだうだしながらネットで口語のいい教材がないか探していたのですが、最近意外なところに転がっていたのを発見しました。東京外国語大学がネットで公開している「東京外国語大学言語モジュール」のうちのペルシア語の部分がそれです。

東外大言語モジュール : http://www.coelang.tufs.ac.jp/mt/

ペルシア語は現在モジュールで公開されている27言語の中では、文法説明についてはまだ一切記載がなかったり、発音や文字の説明もなかったりと、はっきり言って内容は充実していません。しかし、おそらく授業で使うのであろう、会話スキットだけは、映像とペルシア語、日本語訳がすべて公開されており、これが口語体になっています。

簡単な文法説明もあるにはあるのですが、「文語のこれが口語ではこう変わっています」レベルの説明しかないので、文語をまったく知らない学習者がはじめからこれで勉強するのは、はっきり言って無理だと思います。一方で、文語文法をひと通り把握しているぼくのような学習者にとっては、文語と口語の違いを確かめながら口語の勉強ができるという点で、なかなかおすすめの教材なので、ここで紹介しておきます。

追記(2015/05/18)

その後、大きめの書店で口語が学習できる教材がないか探していたところ、以下の書籍については、口語の表現に紙幅を割いていることが確認できました。口語を学習したい学習者は、以下の本にも触れてみるといいかもしれません(が、個人的には、文語をしっかりやった後に口語に触れたほうが入りやすいという意見は変わっていないです)。

まずはこれだけペルシア語 (CDブック)

まずはこれだけペルシア語 (CDブック)

SS式すぐに話せる!ペルシア語

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