おとやろぐ

イタリア製・ソ連製西部劇研究家見習い

テレンス・ヒル主演『マッテオ神父の事件簿』放送中

AXNミステリーチャンネルというスカパー!や各種ケーブルテレビで見られるミステリー専門チャンネルがあるんですが、そこで2月から『マッテオ神父の事件簿』(Don Matteo)というテレンス・ヒルが主演するホームドラマ的な要素が強いミステリードラマが放送されています。

本作は今から16年前の2000年に第1シーズンが放送され、現在イタリアでは第10シーズンが放送されているという、ヒットドラマ。イタリア中部にあり、唯一の内陸州であるウンブリア州のグッビオ(実際にあるコムーネで、ペルージャの北東に位置します)を舞台に、困った人を放っておけない神父マッテオ(ヒル)が、持ち前の洞察力と愛情を駆使して事件を解決していく、というストーリー。

AXNミステリーチャンネルでは、何故だかわかりませんが、イタリアでは2009年に放送された第7シーズンからの放送。今のところ「全24話」というアナウンスなので第7シーズンしか放送予定はないようですが、もっと前のシーズンや新作も放送してくれるといいなぁ。

登場人物の人間関係など、シリーズを通して進展していく部分もありつつ、謎解き要素は1話完結で進んで行くため、どこからでも見られるのも魅力ですね。また、今のところAXNミステリーでは第1話、第2話が放送されているのですが、殺人事件は起きておらず、基本的に(被害者を含め)関係者が皆何となく納得する形でお話が終わるので安心してみていられる、そういうタイプのドラマです。

さて、主演のテレンス・ヒル。ぼくらマカロニウエスタンクラスタには説明不要の名俳優です。本作を紹介するサイトの中には「ビスコンティの『山猫』にも出演した」という言葉でヒルを説明しているものもあります。確かにそれはその通りなんですが、ヒルのイタリアでの人気を説明するには不十分です。

テレンス・ヒルがマカロニウエスタンに登場するのはフランコ・ネロが主演して日本でも大ヒットした『続 荒野の用心棒』(Django)の続編に位置付けられることもある作品『皆殺しのジャンゴ 復讐の機関砲』から。制作会社としては、ジャンゴ役には前作から引き続きネロを当てようとしていたらしいのですが、ネロは『キャメロット』の撮影でアメリカに行ってしまい、いつまで経っても帰って来ない。そこで仕方なく、ネロに似た俳優を、ということでヒルを起用して製作されたのが『皆殺しのジャンゴ〜』でした。本作のヒルは『マッテオ神父の事件簿』でも見せている明るいキャラクターは抑え、復讐に燃える暗い男を演じています。

そんなヒルが本作にもつながる明るいキャラクターを演じて人気者になったのが、その後長らくコンビを組むことになるバッド・スペンサーと共演した『風来坊/花と夕陽とライフルと…』でした(ただし、ヒルとスペンサーの共演作は本作以前にもあり、本邦未公開のマカロニウエスタンDio perdona... Io no!』、あるいは直接の共演シーンはないものの、サンダル史劇『ハンニバル』まで遡れます)。本作のコメディ要素は日本でこそあまり受けませんでしたが、本国イタリアでは大受け。続編である『風来坊 II/ザ・アウトロー』は日本未公開ながら、イタリアではマカロニウエスタン最高の興行収入を叩き出しています。

テレンス・ヒルとバッド・スペンサーはその後、現代劇でもコンビを組み、80年代まで多くのコメディ・アクション映画を生み出して行きました。本国イタリアはもちろん、ドイツでも彼らの映画は非常に人気があり、今でも映像ソフトを手に入れることができます。

また、2010年には彼らのイタリア映画界への長年の貢献に対し、イタリアのアカデミー賞的な位置付けの映画賞、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の生涯貢献賞が送られています。

そんなヒルでしたが、90年代以降は活躍の主な舞台をテレビドラマに移し、コメディ西部劇『ルーク&ジョリー/おいらのご主人、保安官』(Lucky Luke)や、それに続く本作で主演を勤めています。

今年でもう77歳になる(第7シーズン公開時は70歳!)テレンス・ヒルですが、坂の多いグッビオを自転車で颯爽と駆け抜ける姿は歳を全く感じさせない若々しさ。テレンス・ヒル ファンが必見なのはもちろんですが、往年のマカロニウエスタンファン(特にヒル主演作(『ミスター・ノーボディ』とか!)ファン)、そしてほのぼの系人情ミステリーがお好きな方には是非是非お勧めしたいドラマです。