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おとやろぐ

イタリア製・ソ連製西部劇研究家見習い

気軽に(?)行けるマカロニテーマパーク 〜マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション発売に寄せて〜

ウエスタン

さて、ついに朝日新聞出版社から分冊百科「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」が発売されました。それを記念して、というわけでもないのですが、以前似たような企画のために書いたものの、企画がなくなったため死蔵されていた幾つかの原稿から、アルメリアマカロニウエスタン・テーマパーク誌上ツアー&ツアーガイドをご紹介します。(一人称が「筆者」とかなってるのは紙媒体を想定していたためです。)


マカロニウエスタンに限ったことではないのかもしれませんが、ロケ地探訪というのは過酷な作業です。映画に映された一瞬のシーンから山の形を読み取り、車やバイクを駆使してスペインの荒野を、時には地権者に怒鳴られながら、微かな痕跡を探して走り回る。そんな体験をしながら、探していたロケ地を見つけたときの感動はひとしお……だそうです。お恥ずかしながら、筆者もそこまで過酷なロケ地探訪はしたことがなく、そういったルポは他の方にお任せするとして。今回は、そこまで過酷な体験をする時間も覚悟もないけれど、ちょっとした時間(と言ってもスペインまでは行っていただくことになります)で気軽にロケ地観光をしてみたいというアナタ、そこのアナタ向けのお得情報をご紹介いたしましょう。そんな旨い話があるわけないって? いや、それがあるんです。

さて、スペイン行きの航空券はおさえましたね? 行き先は、まぁ、バルセロナでもいいですが、ここはおとなしくスペインの首都、マドリッドにしておきましょう。マドリッドまでは飛行機で15時間以上。慣れない外国での乗り継ぎもあってお疲れでしょう。1日目はバルで美味しいつまみとスペインワインを頂いて、早めに休んでしまいましょう。早めと言ってもスペインの夜は結構遅いんですけれど。翌日、マドリッドのアトーチャ駅から列車に乗車。目指すはアンダルシア州アルメリア県の中心都市、アルメリアです。

マドリッドからアルメリアまでは6時間程度。南に下るにつれて、車窓はオリーブ畑が点在する緑豊かな風景から、マカロニウエスタンの荒野を思わせるようなゴツゴツした荒地が散在する風景に変わってゆきます。列車は終点アルメリア駅に到着。アナタは荷物を抱えて駅舎から出てきました。はい、そこで左斜め後方をご注目ください。そちらに見えますのが『夕陽のギャングたち』のロケ地に使用された旧アルメリア駅でございます。2000年代初頭までは現役の駅舎として使われていましたが、現在は中に入ることはできません。残念。

アルメリア1日目は市内観光でもしましょうか。そんなに大きな町ではなく、中心部はぶらぶら歩いて回ることができます。潮風に吹かれながら、駅から西にむかうと旧市街が広がっており、要塞跡であるアルカサバ、教会であるカテドラルなど、観光名所が散在しています。ぶらぶらしていたアナタは、アユンタミエント(市庁舎)の前で見覚えのある風景にぶつかります。そう、ここはトーマス・ミリアン主演の『復讐無頼・狼たちの荒野』で使われたロケ地なのです。そろそろ暗くなってきました。今日はクリント・イーストウッドリー・ヴァン・クリーフも泊まったという、ホテル・アルメリアにでも泊まりましょうか。

アルメリアに来るマカロニファンには2種類の人間がいる。レンタカーを借りる奴と、タクシーをチャーターする奴だ。さて、レンタカーでもタクシーでも良いのですが、郊外への足を確保しましょう。ちなみに、レンタカーの場合、市街には借りられるところが少ないため、L-22系統のバスでアルメリア空港に向かい、そこで借りると良いでしょう。アルメリア市街からA92号線を30分ほど北上すると、ゴツゴツした荒野(この辺りにもロケ地が散在しています)の先にひとつのテーマパークが見えてきます。その名もミニ・ハリウッド。

入り口で入場料を払い、中に入ると大音量のマカロニミュージックがお出迎え。レオーネやコルブッチ監督作品の音楽が賑やかにかかっています。そして辺りそこここに見覚えの建物、建物、建物。そう、このテーマパークは『夕陽のガンマン』のために作られたセットをそのままテーマパークとして保存しているのです。カルロ・シミが頭取をつとめていたエル・パソ銀行ももちろんあります。そして大通りには無法者風の衣装をつけた髭面の男や、派手な衣装をきた酒場の踊り子たちも行き交っています。

夢中で建物を見たり、写真を撮ったり、映画ポスターを見たり(中にはポスターが所狭しと飾られた小さな展示施設もあります)、手配書ポスターの顔ハメをしたりと遊んでいたあなたの耳に銃声が飛び込んできます。すわ無法者の襲撃かと広場に向かうと、そこでは西部劇ショーが開催されていました。銃撃戦あり、バルコニーからの転落あり、馬で囚人が引きづられるシーンありと、なかなか見ごたえのあるショーに大満足のアナタ。ただ、ちょっと登場人物の身のこなしが最近のアメリカ西部劇っぽかったのは、まぁ、気にしないでおいてあげましょう。その後サルーンでカンカンショーまで見て大満足。さて、そろそろアルメリアに戻りますか。なに? まだマカロニ気分が抜けきらない? それじゃあ、もう1軒ハシゴしましょう。

ハシゴと言っても次のサルーンじゃないですよ。ミニ・ハリウッドからさらに5キロほど車で北上しましょう。幹線道路を外れ、ガタガタ道を不安になりながらしばらく走っていくと、「TEXAS HOLLYWOOD」と書かれた少し埃まみれになった看板が見えて来ましたね。ここがもう一つのロケ地テーマパーク、テキサス・ハリウッドです。なになに? ミニ・ハリウッドと比べてみすぼらしい? うーん、確かに。しかし、ここも『盲目ガンマン』をはじめとする多くのマカロニウエスタンで使用された貴重なオープンセットをそのまま保存したテーマパークなのです。

確かにミニ・ハリウッドに比べると保存状態はあまりよくありませんが、敷地面積はこちらのほうが広く、白壁で作られたメキシコの村を再現したセットもあって、なかなか楽しめるでしょう? ほら、ダン・ヴァン・フッセンのサインもありますよ。スペイン人の団体観光客が来ていることの多いミニ・ハリウッドに比べるとこちらのテキサス・ハリウッドは観光客も少なめで、低予算マカロニウエスタンの雰囲気をよく醸し出してもいます。

また、このテキサス・ハリウッドは、マカロニウエスタンではないですが、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督のスペイン映画『マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾』のロケ地としても使われたほか、近年始められたアルメリア・ウエスタン・フィルム・フェスティヴァルという西部劇映画祭の主要会場の一つにもなっています。

テキサス・ハリウッドでも西部劇ショーを堪能してアルメリアに帰ってきたアナタ。これからどうします? お急ぎでしたら夕方の列車でマドリッドにも戻れますが。なになに、まだ時間がある。もうちょっとロケ地を見てみたい。うーん、困ったなぁ。テーマパークになっているロケ地はこの2か所くらいしかないんですよ。ふんふん。別にテーマパークじゃなくて構わない。じゃあ明日、車を2時間くらい走らせて、東のガタ岬のほうまで行ってみましょうか。あっちにもまた、『夕陽の用心棒』のロケ地とか、『怒りの荒野』のロケ地とか、面白いところがいろいろあるんですよ……