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日本におけるマカロニウエスタンの世代別受容に関する試論

また唐突に書く。マカロニウエスタンとは、雑に定義すると1960年代から70年代にかけて、イタリア資本で制作された、アメリカ西部劇の模倣からはじまり、いつしか独自のスタイルを作り上げるに至った映画群のことである。初期を画する作品は、セルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』(1964)ではあるが、必ずしもこの作品がイタリア最初の(すなわち世界初の)マカロニウエスタンというわけではない。

マカロニウエスタンについて正確に定義しようとすると、毎回百家争鳴状態になるし、私の意見だけでもかなり長々と叙述することになるので、そのうち書くかもしれないけれど、本項では省略する。

さて、本項で書いてみたいのは、日本におけるマカロニウエスタンの世代別受容についてである。私見では、日本でマカロニウエスタンを受容した層は大きく4つに分けることができると考える。列挙すると以下のとおりである。

  1. 劇場封切り世代(第一世代)
  2. 地上波放映世代(第二世代)
  3. BS放映世代(第三世代)
  4. 朝日DVDマガジン世代(第四世代)

以下、私見ながらそれぞれの世代について簡述を試みたい。

劇場封切り世代(第一世代)

言うまでもなく、『荒野の用心棒』 を一番館で鑑賞し、その衝撃をもろに食らった世代である。現在の年齢層でいうと、概ね60歳代中〜後半以降の世代に当たる。早い人だと60代前半の方でも、かなりの作品を一番館で見ていたりする。すごい。『赤い砂の決闘』を一番館で見た現役のマカロニファンとか、もはや天然記念物級に貴重だと思う。

この世代は例えば、『真昼の用心棒』は現在ソフト化されているのは第2編集版だけれど、当時劇場でかかったのは第1編集版で、第2編集版にはなかったシーンが確かにあった、みたいな濃い話ができる。記憶力すごい。マカロニウエスタンについて全てを見てきたわけで、生き字引のような存在

地上波放映世代(第二世代)

地上波の洋画劇場では70年代に数多くのマカロニウエスタンが放送されている。劇場公開作もあったし、いまでもソフト化されていないようなB級C級作もかなり放送されていた。第二世代はそういった地上波の放送に触れた世代であり、概ね40歳代中盤〜60歳代前半あたりが当てはまる。この方々の中には、二番館、三番館での上映を見ている方も多い。というか、ほとんどだと思う。

いまでも一番活発にファン活動をされている方が最も多いのがこの世代で、毎年名古屋で開催されているマカロニウエスタンのファンミーティング「マカロニ大会」を運営されているのも、だいたいこの世代に該当する方が多い。今年は所用で参加できず、連続参加記録が途切れてしまったのが残念だが、来年は万難を排してまた参加したい。

閑話休題。この世代には、その道では世界的にも有名なマカロニウエスタンロケ地研究家の方がいたり、ポスターコレクターの方がいたり、多士済々である。

ここまでの世代の方は、80年代90年代のマカロニソフト不毛時代を生き抜いてきた方であり、記憶力とか情熱とかがなんかものすごい方が多い。海外VHSを個人輸入して見ていた方も多い

BS放映世代(第三世代)

1990年代後半、理由はよくわからないのだけれど、一時期NHK BS2(今のBSプレミアムの前身)でマカロニウエスタンが大量に放映されていた時期があった。この放映でマカロニウエスタンにハマった人や、この少しあとに蔵臼金助氏の尽力によってイマジカから続々と発売されだしたDVDによってハマった人がこの世代に属する。

年齢的には30歳代〜40歳代だが、この辺りからソフト化された作品を誰もがいつでも見られる環境が整ってきているため、年齢層にバラけが出はじめる。私はこの世代に属する。

口を開けていれば新しいソフトが供給されるし、何度でも見返せるので幸せな世代ではある。ただ、日本で発売された作品だけでは飽きたらず、海外DVDを買い漁る人間もいる(私のことである)。

朝日DVDマガジン世代(第四世代)

一昨年から朝日新聞出版より発行されていたマカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション、および、その販促活動をされていた蔵臼金助氏のTwitterによってマカロニウエスタンの魅力に目覚めた世代。

今までの世代との大きな違いは、今までに比べると女性が多いらしい、ということ。今までも女性ファンはいたけれど、男性ファンに比べると圧倒的に少なかったので、特徴的な変化である。また、Twitterを見ていると、ボーイズラブ的な受容をされている方も散見される。

個人的には、マカロニウエスタンホモソーシャル要素の強い映画であり、いわゆるBLとの相性は悪くないだろう、と感じていたので、やっと見つけてくれたか、という感じではある。

こんな感じで、マカロニウエスタンファンについて雑に世代分けしてみたのだけれど、古いファンも新しいファンも分け隔てなく熱く語れるのがマカロニウエスタンの素晴らしいところの一つだと個人的には感じています。マカロニ大会で、新しいファンの方とお会いするのがすごく楽しみです。

マカロニ大会に参加していると、ざっくり3世代に分けることができるなあ、とずっと感じていて、今回のDVDマガジンでさらに新しいファンが増えてくださったようなので、なんとなく書いてみました。