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「Steins;Gate 線形拘束のフェノグラム」をトロコンしたから感想書く

ネタバレあり

STEINS;GATE 線形拘束のフェノグラム (通常版) - PS3

STEINS;GATE 線形拘束のフェノグラム (通常版) - PS3

 

Steins;Gate」シリーズの番外編的な短編集、「線形拘束のフェノグラム」。発表時期的には「比翼恋理のだーりん」の後で「ゼロ」の前。設定的には「だーりん」の方の要素は存在しているけれど、「ゼロ」要素は構想はあったかもしれないけれど、まだ発表はされていない、ということを頭の隅に置いておかないと、たまにあれってなる。ちなみに「だーりん」は未プレイ。

まあ、基本的には本編とは直接的には関わり合いの薄いスピンオフ、という認識でいいのかな、とも思う。一方で、本編側と明確に矛盾しない部分は、本編でも同様か、近い事象が発生していた、と考えても、差し障りはないのかもしれない(岡部がラボを構えた動機とか)。

総評としては、やっぱり結局のところファンディスク、というか、公認二次創作以上のものではないなあ、という感じ。本編では描かれていないキャラクターの心情の補間がされている、という意味では面白いのだけれど、少なくともゲームとは言えないわけで。これをドラマCDなどではなく、ゲームという媒体で表現する必然性があったのか、と言われると疑問はある。必然性がなければゲームにしてはいけないのか、と問われると、もちろんそんなことはないのだけれど。

以下、それぞれのシナリオについてちゃちゃっと書く。

「走査線上のジキル」クリア時の感想・疑問

全体の感想

世界線変動率 0.337199%。岡部シナリオ。

唐突なアルパカマンの登場に困惑したけれど、コメディ寄りの日常パートから、深刻な非日常パートに移行するのはシュタゲの基本的なスタイルなので、このシナリオもその文法に則っているとは言える。

まゆりの正体(?)については割と早い段階で推測が立てられたので、そこらへんはそんなに驚きはなかったけれど、逆に岡部を見ていて辛いものがあった。

下に記すような疑問点、不可解な点はいくつかあるものの、単品のストーリーとして見れば、信頼できない語り手としての岡部がなかなかいい感じではある。また、終盤で凶真の復活が見られるので、その辺は物語としても楽しい。ただ、まあ、やっぱり短編だし、ファンディスクですね、という感じ

この世界線について

シナリオ選択画面に表示される変動率は0.337199%。これは『Steins;Gate』(以下「本編」)ではDメールを送りまくって、初めてラウンダーの襲撃が発生した世界線に非常に近い。このシナリオでのまゆりの死亡が8月13日であること。ラウンダーによる襲撃が発生していると思われることから、やはり「本編」での0.337187%の世界線にかなり似た世界線だと思われる。

なぜ萌郁が生きているのか

。「本編」世界で語られたとおり、ラウンダーは任務に失敗しても成功しても始末される存在であることを考えると、変動率0.523299%の世界線同様、萌郁の死も確定しているのではないか、という推測が立つのだけれど。あとミスター・ブラウン。

なぜタイムリープマシンが存在したままになっているのか

同様に謎。ラウンダーの襲撃があったということは、SERNに情報が漏れているはずであり、彼らがタイムリープマシンの存在を放置するとは思えない。同様に、「本編」では紅莉栖とともに拉致されるはずの岡部とダルが自由に活動しているのも不思議。岡部はおかしくなって利用価値なしとみなされたのかもしれないけれど、ダルは?

また、ドクター中鉢がSERNに迎え入れられた、と紅莉栖は語っていたが、岡部が推測している通り、まあ、単なる人質なんだろうね。中鉢本人は自分の研究が認められた、と思っていそうで哀れではある。

この世界線におけるルカ子の性別は?

変動率0.33%台で8月13日にラウンダーによるラボ襲撃が発生している世界線、ということは、「本編」では全てのラボメンの希望をDメールで叶えた世界線、ということであり、そうするとこの世界線におけるルカ子は女、ということになる。シナリオ内には特に性別に関する言及はなかったと思うけれど。

更に、本シナリオ中、メイクイーンが登場していないことや、サンポやヨドバシといった萌色の少なめなキーワードしか登場しない(雷ネット絡みはそこそこ頻出してるけれど)ことから、もしかするとこの世界線秋葉原は萌えのない電気街である可能性がある。

「絢爛仮想のファムファタール」クリア時の感想

世界線変動率 3.019430%。ダルシナリオ。

あのダルの主観で物語が展開するので、「本編」以上に5ch(当時は2ch、ゲーム内では@ch)用語が多発する。その辺、きつい人にはきついと思うけれど、そもそもそんな人はこのファンディスクまで遊んでないと思う

他の作品では見られない岡部の立ち絵が見られるのは、このシナリオに限らず新鮮で面白いです。

ストーリーはまあ、何というか、変動率3%台の物語は基本的に「本編」と無関係な物語の詰め合わせ、という感じなので。ただ、@ちゃんの「チョップスティック・ガール」のコテハンがチョプ子氏本人だとダルが確信した根拠が薄いのは気になりました。スーパーハカー、もうちょっとネットは疑ったほうがいいんじゃ…… そのへんも運命の力なんですかね。

あと、この世界線のラウンダーは何がしたいのか、いまいちさっぱりでした。また、最後に紅莉栖が提示したタイムパラドックスについてもぶん投げっぱなしで、いいのか悪いのか……

「雨鈴鈴曲のスクレイパー」クリア時の感想

世界線変動率 3.386019%。天王寺(ミスター・ブラウン)シナリオ。

紅莉栖のよりも先に、なぜかこちらをプレイ。変動率3%台の世界線はまあ、上にも書いたけれど、「何でもあり」の世界だから、あんまり考察のし甲斐はないのよなあ。ただ、ダルシナリオでは2010年に存在していた鈴羽が、このシナリオでは2010年には来ていない。

言いかえると、3.019430%の世界では、鈴羽が2010年に来なければならないような未来が存在しており、3.386019%の世界ではそういった原因が存在していないというわけで、0.37%ほどのズレのわりに、世界の流れはだいぶ変わっているように思える

「本編」ではまったく描かれなかった、岡部が秋葉原にラボを作った理由、がそれとなく語られていたのも、このシナリオのよかった点でしょうか。

基本的にはコメディ要素強めのシナリオ。凶真さんが終始楽しそうなのが印象的。あとは子供鈴羽可愛い。

「黄昏色のソーテール」クリア時の感想

世界線変動率 0.328403%。紅莉栖シナリオ。

天王寺シナリオはまあ、箸休めというか、本来こっちのシナリオをクリアした後にプレイされることを想定されてるんでしょうね。とは言え、個々のシナリオは完全に独立しているので、どんな順でプレイしても問題はないわけですが。

ダイバージェンス値が0%台ということで、α世界線を舞台とした物語。「走査線上のジキル」同様、「本編」の間隙を埋めていくタイプの物語になっています。「本編」ではほとんど絡むことのない紅莉栖とフェイリスのやりとりが豊富に見られたのはとても良かった。ドラマCD「哀心迷図のバベル」でも二人のやりとりは見られますが、本シナリオもあれに似た部分が多いですね。

そのフェイリスですが、口調が安定していないというか、猫耳を付けているときは初対面の相手にも「ニャ」口調で喋るのがフェイリスだと思うのですが、本シナリオでは紅莉栖と話すシーンの多くで「ニャ」が付かない、口調で話しているのが気になります。状況が状況だけに空気を読んだ可能性も、なくはないですが、そういうキャラでしたっけ。

ソーテールは「救い主」程度の意味という理解でいいんでしょうか。それが分かると、割としっくりくるタイトルです。

「幽霊障害のランデヴー」クリア時の感想・疑問

世界線変動率 0.337337%。鈴羽シナリオ。

岡部、紅莉栖シナリオに引き続き、α世界線を舞台としている。α世界線を舞台とするシナリオは、基本的に「本編」の隙間を埋めていく形のシナリオだと想定していたのだけれど、このシナリオは割とオリジナル要素というか、二次創作的要素が強めという感じ。

α世界線の鈴羽の元に、鈴羽にしか見えない軍服姿の鈴羽(恐らくβ世界線の鈴羽)とメイド服姿の鈴羽(SG世界線の鈴羽?)がやってきて……というお話。本編では、確か、複数の世界線が同時に存在している、というパラレルワールド的な世界観は否定されていたと認識しているのだけれど、そうすると、一つの世界に、ゴースト的な存在(と作中では示唆されていた)とは言え、別世界線の鈴羽が現れる、ということをどう解釈したらいいのか。

ファンの二次創作なら目をつぶれるところだけれど、一応公式から出ているシナリオとしては、その辺もうちょっとうまいこと説明して欲しかった気はする。おしゃれした鈴羽は可愛らしかったけれど。でもこのシナリオって、世界線的には「失敗した」ルートなんだよね……

「桃色幻都のシャ・ノワール」クリア時の感想

世界線変動率 3.182879%。フェイリスシナリオ。

ほんとδ世界線はなんでもありだな。物語中でDメールは送信されているのだけれど、リーディング・シュタイナーを持たないフェイリス視点で物語が展開するので、プレイヤーに提示されるのは、Dメールが送信されなかった、一番最後の世界線だけ、というのは面白かった。この辺、天王寺シナリオとは描きかたがだいぶ違う。

おそらく、(1)綯が生き埋めになるor見つからない世界線でフェイリスが自分にDメールを送り、(2)綯を助けに行ったフェイリスが生き埋めになる世界線で鈴羽が自分にDメールを送り、(3)プレイヤーに提示された世界線に移動、という流れがあったのだろうと思われる。

ミスター・ブラウン、いい話をしていると見せかけて、ラウンダーのアジトの件は自分で握りつぶしていたと思われ、さすが大人きたない。まあ、そういう二面性もこのシナリオで描きたかった内容のひとつなのかもしれないとは思われる。

2010年まで存命していてラボメンと再会した鈴羽、というのは、ファンなら見てみたかった世界ではあるものの、やっぱりδ世界線なんでもありだな、という気もしないでもない。しかし、鈴羽は自分以外のシナリオでもやたらと活躍している印象。キャラクターとして動かしやすいんでしょうね。

80年代に出没していたというシャ・ノワールの正体についても、割と早い段階で想像は付くのだけれど、ダルシナリオ同様、やっぱり因果が閉じちゃってるのよね…… 「本編」では世界線変動ということで説明がついていたけれど、このシナリオでも世界線が微妙に変動した、という理解でいいのだろうか。

「迷宮錯綜のヘルマフロディトス」クリア時の感想

世界線変動率 0.456923%。るかシナリオ。

このシナリオ。多分このゲームの中で一番好きです。いろいろ書きたいことがあるんですが、まず第1に漆原るかというキャラクターについて。「本編」プレイ時から感じていたのですが、彼(女)は非常に内省的なキャラクターです。

そのため、「本編」などではどうしてもセリフが少なめで、内気なキャラクターとして描かれてしまうんですが、頭の中では非常に色々なことを考えているわけで。これが彼(女)の主観で描かれるシナリオになると非常に活きてくる、という印象。もともと魅力的なキャラクターですが、このシナリオで内面が丁寧に描写されることによって、また一段と魅力が深まった、というかそういう感じです。

次にシナリオ。やられました。シナリオ開始時に既にまゆりは死んでおり、るかは彼女の最後の願いを叶えるために、過去に飛ぶわけなのですが、これって「本編」のるかエンドのエピローグ部分と一緒なんですよね。なので、てっきり、あの部分を丁寧に、ひとつの短編として描くシナリオなんだと思っていたんですよ。それがあんなことになるとは。クライマックスにかけてどんどん盛り上がっていく展開は、非常に「シュタゲ」らしくて好きです。よく考えると、「本編」のるかエンドは0.456903%で、本シナリオとほんの少しだけズレがあるんですよね。

タイムリープ関連の展開も、うまいこと矛盾のないように描かれていて、とてもよかった。あのタイミングでDメールを送ると、おそらく0.5232%台の8月18日に飛ぶのだろうけれど、岡部の記憶は持続しているから、そこから更に過去に飛んだのでしょう。

ラスト、シュタインズ・ゲート世界線での話なのかと思ったんですが、最後のダイバージェンスメーターの値を見ると1.049326%となっていて、ほんの少しだけずれているんですよね。この世界、概ねSG世界線同様と考えていいんだろうか。

タイトルのヘルマフロディトスはるかを言い表すのに言い得て妙というか。よくまあ、こんなぴったりな神格いたな、っていうレベル。

「悠遠不変のポラリス」クリア時の感想

世界線変動率 0.571046%。まゆりシナリオ。

「本編」で岡部がすべてのDメールを順番に取り消していって、あとはSERNに捕捉された最初のメールを消せばβ世界線に戻れる、というタイミングの世界線を舞台にしたシナリオです。

こういう解決方法があったのかー、という感じ。「本編」のフェイリスエンドに近い(最後のダイバージェンスメーターの数値を勘案すると、同じΩ世界線っぽい)終わり方ですが、世界線変動を「夢」という形でうっすら覚えている、という設定が割合強く出ているので、まだ救いはある、というか。

Ω世界線では紅莉栖の生死は一切不明(というか、そもそも日本に来ているのか、更に言えばアメリカに行っていたのか、すら不明)なので、「本編」のいちエンディングとして描かれるならともかく、結末がひとつしか描かれないこの作品で描かれると、ちょっとしたもやもやは残ります。

また、「夢」の設定をあんまりつよく押し出しすぎると、過去改変の記憶を岡部のみが保持している、という「本編」の肝というか、物悲しさというかが薄れてしまうので、個人的にはあまり好みではないです。このシナリオについていえば、最後、少し救いがあったのはやっぱりほっとはしましたが。ただ、そうすると「本編」のフェイリスエンドにも、岡部とまゆりの再会の可能性が生まれてしまうわけで、それはちょっと、あのエンドの価値を下げるなあ、という思いがあります。

「昏睡励起のクアンタム」クリア時の感想

世界線変動率 0.509736%。萌郁シナリオ。

「本編」でも彼女の心情というのはそれなりには描かれていた(少なくとも、るかやフェイリスに比べると)のだけれど、それを更に丁寧に描いたシナリオ、という感じ。物語の構成としては、最初に結末に近い部分を描き、一旦時間を遡ってそこに至る経緯が描かれる、という形式。遡ってというのは、時間遡行的な話ではなく、語りの手法としての話です。

一応α世界線を舞台としているのですが、他のα世界線が舞台のシナリオとは違い、世界線変動率が「本編」で登場する世界線とは比較的離れており、このシナリオオリジナルな展開が多い。

「本編」でも、萌郁自身の居場所を作ってくれるはずの人を、彼女自身が殺してしまったことに対し、岡部が苛立ちを表明しているシーンがありましたが、襲撃のタイミングまでに彼女がそれに気付けていたら何が起こったのか、というのがこのシナリオで描かれた内容なんでしょうね。比較的好きなシナリオです。

「三世因果のアブダクション」クリア時の感想

世界線変動率 4.456441%。岡部(凶真)シナリオ。

隠しシナリオを除くと最終章となるシナリオで、クリア時にエンディングテーマも流れるのですが、内容はDメールを面白く使ったドタバタというか何と言うか。パズル的にパーツがハマっていく展開は面白いのですが、その結果明かされる真実が微妙と言うか、肩透かしと言うか。

正直、新キャラクター(しかも立ち絵つき)を出し、更にδ世界線ともまた違う世界線を作ってまで描く価値のあったシナリオなのかどうか、非常に疑問です。また、テキストにもちょいちょい違和感があって、特に岡部のセリフがたまに説明的というか、くどいというか、ちょっと違う印象があったんですよね。ライターさんの違いが影響してるんだと思いますが(誰が書いたのかまでは調べてない)。

ちょっと全体を通して、微妙な出来だったのは間違いない。

「月暈のビヴロスト」クリア時の感想

世界線変動率 0.337161。綯シナリオ。

「三世因果のアブダクション」クリアで解禁される隠しシナリオ。世界線変動率から考えると、「本編」で13日にラウンダーによる襲撃が発生した世界線と非常に近い世界が舞台だと考えられる。ダル、スイスに拉致されてたって言ってたし。あれ、でもだとすると何でフェイリスパパが生きてるんですかね。よく分からん。ストーリー上、必ずしも生かす必要もなかった気もしますが……

この世界線では綯さんは執念綯さんにはならないわけなんだけれど、どうにもなんか怖い…… 基本的には常にいい子なんだけれど、こう、どうにも(笑)

登場人物はほぼ綯とダルのみ。まあ、フェイリスが重要な役どころで出てはいるものの、登場シーンはそこまで多くない。ストーリーも少し短めなのは隠しシナリオだし仕方ないけれど、ちょっと寂しい。

クライマックス、基本的にはDメールの送信には成功した、という理解でいいのだろうけれど、結局ダルはどんなメールを送ったんだろか…… まあ、物語的にはそこはあまり詰めてなかったとしても問題はない部分なんだけれど。