多言語学習者界隈では各言語版の『星の王子さま』を収集するのが流行っている界隈もあるようで、私も少し前に広東語版の『星の王子さま』を手に入れました。毎日少しずつ書き写しながら読んでいるのですが、面白い表現にぶつかったのでご紹介します。
まずは該当箇所の日本語版。
それで僕は、おとなたちにもわかるように、ボアのなかが見える絵を描いてみた。おとなたちには、いつだって説明がいる。
サン=テグジュペリ、河野万里子訳(2006)『星の王子さま』新潮社(強調は筆者)
ところで、電子書籍で引用個所を明示したい場合、ページ数とかどうすればいいんでしょう。とにかく、第1章の中ほどの部分です。
同じ部分が広東語版では以下のようになっています。
噉我唯有將條蟒蛇肚入面嘅情況全部畫晒出嚟,等佢哋睇得明啲。佢哋真係要畫公仔畫出腸架。
安東尼·廸·聖艾舒比尼、蔡偉泉譯(2017)『小王子』藍出版
面白いのが、太字にした「要畫公仔畫出腸架」の部分。直訳すると「絵本のキャラクターを描くのに、その内臓まで描かないといけない」くらいになるでしょうか。
ちょっと調べて見たところ、この表現は「畫公仔唔使畫出腸」(キャラクターを描くのに内蔵まで描く必要はない)という慣用句が下敷きとなっている表現のようです。また、「畫公仔畫出腸」自体を慣用表現として紹介している例も見かけました。
要するに、「畫公仔唔使畫出腸」の方は「なんでもかんでも説明する必要はない」というような意味の慣用表現で、それが「要畫公仔畫出腸架」になると、「なんでもかんでも説明しないといけない」という意味になるようです。
この表現は普通話にはない広東語独自のもののようです。ちなみに普通話版の『星の王子さま』では該当箇所は以下のようになっています。
我画出了大蟒蛇内部的样子,以便大人们能看清楚。不管什么是,他们都需要一番解释。
安东尼·圣埃克苏贝里、戴蔚然译(2004)『小王子』文化艺术出版社
すっごい普通。